不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

日記はおもしろい

 高見順『敗戦日記』読了。雑誌『考える人』で荒川洋治が推薦していたのを読み、持っていた事を思い出し読んでみた。
 すこぶるおもしろい。作家の視線に、作家の文章、昭和20年という特別な(となる)一年。時代の空気が匂ってくる。普通の日常を描いた日があれば、ドキュメンタリーチックな日もあり、小説もあれば、詩もある。私的な日記だからこそできた自分勝手で自由な内容。そこら中に引用したい言葉があふれていた。
 前半、どんどん悪化していく戦況を肌で感じながら、食べ物を求め、職を求め、現実を見て、冷静に状況を見極める姿が、悲痛でありながらもたくましい。ところが、状況が変わる敗戦後の方が冷静(平静)さを失ってうろたえる著者の姿があった。生命の危険はなくなったけど、現実からは目をそらしたい。戸惑い、混乱。これから日本はどうなるんだろう。《物事ヲ従ヘヨ。物事ニ従フコト勿レ(ホラシウス)》でこの一年は締めくくられている。
 こりゃおもしろい。その他の部分も全部読んでみたいが確か17巻くらいあるんだっけ? うーむ。見つけるのは簡単だろうが、置く場所がなぁ。

敗戦日記 (文春文庫)

敗戦日記 (文春文庫)