『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』鑑賞。監督、三池崇史。出演、伊藤英明、佐藤浩市、伊勢谷友介、桃井かおり、香川照之、石橋貴明、安藤政信、木村佳乃、堺雅人、そしてクエンティン・タランティーノ。
平家ギャングvs源氏ギャングが、埋もれているというお宝を巡り対立している村に、一人の凄腕ガンマンが流れてくる……。ストーリーが読むだけで笑え、キャストを見れば興味がそそられる。
こういったぶっ飛んだものは、タランティーノに通ずるものを感じるが、如何せんタランティーノとは才能が違う。それはレベルではなく、才能の「質」が違うのだ。
柳下毅一郎が書いていたが、《三池崇史の才能は徹頭徹尾破壊の才能》なのだ。だから、例えば時代や国をわけのわからん設定にしてみたり、日本人ばかりなのに英語を喋らせたり*1、そういった要素は面白い。特に銃撃戦では破壊の才能が開花して、見事なもの。最終決戦は雪降りしきる中。銃と刀の戦いは、一瞬にして永遠。
しかし、それら舞台の上で展開されるはずの「愛と死の物語」が全く構築されていないのだ。タランティーノは「構築」(又は「編集」)の才能が抜群で、ドンドン予想を超えたものが画面上で構築されていく。しかし三池は、破壊のみで構築がないため、やりっぱなし。
何もかもがあり過ぎているのに、何もかもが足りない、と感じるのはこれが理由だろう。今作でも、それははっきりと見て取れた。
豪華な役者陣も、豪華なだけにうまく回っていない。際立っていたのは、桃井かおり、タランティーノ、香川照之。特に桃井かおりは、彼女が普段発する「私は大物なのよオーラ」がいい方向に働き、生き生きと演じていた。見ていないが、多分『SAYURI』よか楽しかったんじゃなかろうか。
文句言ったけど、豪華な役者陣は、やはり見ていて眼福ではあった。が、木村佳乃はなぁ……色気が全然感じられないんだよなぁ……ダンスシーンあったけど踊りうまくないし。嫌いじゃないけど、ミスキャストかと。
マカロニ・ウェスタンに対抗してのスキヤキ・ウェスタンだが、対抗心が前に出すぎたか。娯楽に徹するのならば、もっと徹し、シリアスに行くのなら物語を構築しなければ、ここで終わってしまう。
面白い試みではあるので、三池に続いて、他の誰かが作った作品を見てみたい。