鏡明『不確定世界の探偵物語』読了。鏡明が目黒考二『笹塚日記 ご隠居篇』に書いたコメントが良かったので(コチラ)読んでみた。
タイムマシーンを使ったSFには、タイムパラドクスがどうしても発生してしまうのだが、本書はそれを逆手にとった(逆手とは違う?)小説。ジャンルで言えば、SFハードボイルドと言ったところ。
一人の富豪が所有するタイムマシーン。それによって過去が常に変えられていく“不確定”な世界。死んだ人間が生き返り、生きていた人間が死に、目の前で人間が別の世界の人間となる、そんな世界。
いつ、何が、どのように変化するか。そんな不確定な世界で主人公は探偵を続け、事件を追う。その姿はハードボイルドに他ならない。「何かを探して、追って、追いついた時にはその“何か”は求めていたものではなかった」というのは、チャンドラー小説の根底にあるものだ。
思ったより地味で、文章もキザっちいけど、面白かった。こういう形のSFもあるんだな。
- 作者: 鏡明
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/07
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (60件) を見る