不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

ぬぁりこまやっ!

 くそ忙しいが、何とかやりくりしてコクーン歌舞伎三人吉三を見に行く。中村勘三郎の歌舞伎、特にコクーン歌舞伎平成中村座は何としても見たい。
 開演5分前に滑り込むと、売店で演出の串田和美が新刊にサインを書いていた。開演直前で空いていたので、お願いする。串田和美はビックマイナーだと思う。映画やテレビには殆ど出演せず、舞台でずっと活躍している。手がける作品は、どれもすばらしい。もっと評価されていいはずだ。
 座敷席がいいなぁと思っていたが、前から三列目の最高の席! これだけでテンション上がる。
 笹野高史さんは味のあり過ぎる演技でたまらない。歌舞伎役者は巧いよねぇ、本当に。衣装はひびのこづえ。音楽は椎名林檎で、どうかと思ったが、これがまたよかった。天才かもしんない、彼女。
 今日は何故か「××屋ッ!」と叫ぶ人がいなかった。こういう時もあるんだな。よほど「成駒屋ッ!」と言いたかったが、タイミングがつかめず。一度は叫んでみたい。
 勘三郎の演技に何を言えばいいのか。二幕のラストのたたみ掛けは圧倒的な狂気狂気狂気! 大詰、予想通りといえば予想通りながら、美しい白い風景。紙の雪が舞い散る中、三人の吉三が舞う。

 もはや思ひおく事なし。
 これまで尽くせし悪事の言ひ訳。
 我と我が手に、身の成敗。

 お嬢とお坊が折り重なる。その上に構える和尚。見得を切る……切る……切る……瞬きもせずに睨みつける。静止した時間。鳴り響く、椎名林檎の声。嗚呼!
 「三人吉三」は因果応報の話。登場人物は殆ど死ぬ、かなりの悲劇。にも関わらず、終わった後の爽快感は何だろう。思わずスタンディングオーベーション。
 最高。活力が生まれた気分。また行きたい。いつでも行きたい。楽しかった。
 帰宅後、服を脱いだら紙の雪が一つ落ちた。こんなところに、舞台の欠片。