不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

日常にある、あたりまえじゃない話

 随分前に読んだのだが、書きそびれていた。吉田秋生海街diary 1 蝉時雨のやむ頃』が凄くいい。
 鎌倉に住む三姉妹(後に四)の日常を、日記風に描いている連作。日常といっても姉妹たちには複雑でヘビーな出来事が降りかかってくる。それらを日記風、つまり派手ではなく淡々と、緻密な筆致によって展開していく。
 次女の《あたりまえだと思っていたことは/案外あたりまえじゃないのかもしれない》という独白が印象に残る。よく「日常を淡々と」とか「等身大」とか、そういう表現が使われるけど(俺も使った事あるが)、「日常だ」と思っていた事が、結構「非日常」だったりするのだ。家族や友人・知人、見慣れた帰り道やいつもの夕焼け、その中に《いろいろなものがつまってる》。それをゆっくりとすくってみれば無限に「物語」がある。我々にだって、いくらでもあるはずだ。
 続きが楽しみ。派手なアクションもないし、天才もいないし、ホラー要素も、壮絶な愛もない。だけど、もしかしたら吉田秋生の集大成になるかもしれない。

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃