不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

裏切りとロック


 ディパーテッドを見に行く。監督:マーティン・スコセッシ、出演:レオナルド・ディカプリオ、マット・ディモン、ジャックニコルソン。
 警察に侵入したマフィアと、マフィアに侵入した警察官。裏切りと信頼。
 韓国大ヒット映画『インファナル・アフェア』のリメイク。俺は原作を見ていない。原作のファンがどういう反応するのか気になるが聞いた話では、ほぼ細部まで忠実にリメイクされているそうだ。それでもなおスコセッシ節になっているのが凄い、と。確かにスコセッシ映画だった。
 「裏切りの連続」と「モラルの崩壊」を描かれた作品であり、エンディングからは道徳的なメッセージを受け取る事ができる。*1少々喰い足りない部分はあるが、物語はスリリングだし、音楽もいい。役者陣もよかった。ディカプリオはいい役者になってきた。「レオ様」と言われていた頃が懐かしい。*2ジャック・ニコルソンの、枯れているのに“色気”のあるマフィアのボスもステキだ。マット・ディモンは好きになれないけど、いい演技だった。“ネズミ”同士の交錯も良い。スコセッシ作品の中でベストとは言わないし、上位にも入らないかもしれないけど、面白い映画だった。
 しかし―これは中原昌也が書いていた事と同じだが―《何かが決定的に違う》。
 無いのか、多過ぎるのか、とにかく《何かが決定的に違う》のだ。ここ最近のスコセッシの映画は精彩を欠いていた、と俺は思う。それに比べれば、スコセッシ“らしい”いい作品だ。だからこそ、その「決定的な違い」が顕著に現れ、正直なところ、ほんの少しがっくりしてしまった。次作は「小規模のクルーで、インディペンデントに撮ろうと思う」そうだ。今が「停滞」であり、この作品でさらに“先”に行ってくれる事を期待したい。*3
 と、スコセッシ映画を見てきた者にとって苦い作品だが、それでも(スコセッシファンでも、そうでなくても)金を払って見に行く価値が、この映画にはある。
 最も興奮したのは音楽だ。使い方が秀逸。
 オープニング、ジャック・ニコルソン演じるマフィアのボスの独白シーン、The Rolling Stones“GIMME SHELTER”が被さる。
 クライマックスに向かうシーン、Dropkick Murphys“I'm Shipping Up To Boston”が鳴り響く。
 どれも、驚いてしまうほどカッコ良過ぎた。
 ボブ・ディランやブルースのドキュメンタリー映画を撮っているのに、ここで現役パンクを使うか。まさかスコセッシの作品で音楽、しかもロックの興奮を味わう事があるとは。脱帽。「決定的な違い」を補って余りある興奮だった。すげぇ。

*1:エンディングは『インファナル・アフェア』とは違うらしい。原作も見てみるか。

*2:今も言われているのか?

*3:何でも遠藤周作の『沈黙』の映画化らしい。うーむ、これはちょっと見たいぞ。