不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

榎本空『それで君の声はどこにあるんだ?』/言葉を探して声にする

 マンハッタンのユニオン神学校で「黒人神学」の提唱者ジェイムズ・H・コーンから黒人神学を学んだ日々を綴ったエッセイ集。若書きといっていい拙さもありながら、いや、であるからこそ信仰、祈り、寄る辺についての言葉がダイレクトに響いて、再読必至の一冊。薄く、平易な言葉で綴られているが、ゆっくりとしか進められなかったのは、言葉を噛み締めるようにして読んだから。神学を学びたくなる、読めてよかったと言ってよい。引用や名詞、強調以外に鉤括弧は使われておらず誰かの言葉や会話も地の文になっていて、全て私の声であり誰かの声であると同時に、タイトル通り「それで君の声はどこにあるんだ?」という問いかけにもなっていた。著者が訳したコーンの自伝『誰にも言わないと言ったけれど』も買った。私の声はどこに、少なくともここは私の声なのだと言えるようにしたい。