下書きに入っていたよくわからない一文は他にもあって、それがこれである。
半袖オジサンの帰り道
なんだこれはと思われるだろうが、俺は覚えている。七月の頭の方だった、たしか休日、Tシャツを着て歩く家までの帰り道、少し後ろにいたカミさんが俺の姿を見て、こう言ったのだ、「半袖オジサンの帰り道」と。半袖を着たオジサンの帰り道を見て言ったのだから一字一句、間違いないのだが、わざわざ口に出すようなものではなく何だかおかしくて、たぶんその事を日記に書こうとしたのだけれど、書いた通り字面では何一つとして変わったところがないからうまく書けずに、フレーズだけ残しておいたのだろう、たぶん、覚えていないが。気づけばもう冬だ。