原りょう『それまでの明日』(早川書房)。沢崎カムバック(と毎回言っているな)。今回は文庫を待たず四六版で読んだ。相変わらず隙のない筆さばき、謎解きではなく「何かを探して見つけた時にはそれは変わっていた」という本流ハードボイルドの王道、でありながらラスト20ページには驚きもあり、巧妙で読ませる。沢崎は変わらぬようで、歳と共に少し丸くなったな。決して新しくはない、むしろ古さを感じるけれど、同時に確かに「いま」の小説であり、それが大事だと思う。まぁ出てくる主要登場人物が男ばかりというところは、些か古すぎる気もしたが。女性を書くのが苦手?
沢崎が自分のスタイルをいまに適合させたり、すれ違わせたりするのがよい。事件はミニマムでありながら、ドラマがある。チャンドラーの模倣や亜流にあらず。堪能した。『ミステリマガジン』の著者インタビューによると、前作の時に「早く書く術を身につけた」と言ったが、あれは自分の希望的コメントだったという。では今回の〆の言葉「構想はいままでになく、はっきりとある」も希望的コメントだったりするのか。また13年かかったり? まぁファンなら待つしかないわな。
- 作者: 原りょう
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/02/28
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (15件) を見る
- 作者: 中脇初枝
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/07/29
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る