不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ評伝

 ジョン・ネイスン『新版 三島由紀夫ーある評伝 』(新潮社、野口武彦訳)保阪正康の本や、少し前に著者の回想録『ニッポン放浪記』(晶文社)を読んだので(こっちの感想は書いていない)、本書を読んでみた。図書館になかったので古本で購入して。かなりドライ、というよりシニカルに三島を見ていて、良くも悪くも精緻なのに素っ気ない印象。わりと分析(扱う作品や証言など)が偏っているようにも読めたな。まぁよく調べているし、両親はじめとした取材もしているので読みごたえ十分ではある。でも三島夫人からの抗議があって、新版では削除された部分があるんだっけ。ある意味で不完全版。それにしても、回想録を読んだ時も思ったけど、著者自身の事は「何だかいけすかねぇやつだな……」と思ってしまいました。

三島由紀夫―ある評伝

三島由紀夫―ある評伝

 小谷野敦川端康成伝 - 双面の人』(中央公論新社。著者の評伝ものは『里見紝―「馬鹿正直」の人生』と『江藤淳と大江健三郎 戦後日本の政治と文学』を読んでいて、三冊目。こちらも分厚いが、やはり作品論はやっておらず、あくまで伝記であり、細かな事実を調べまくって、しかしあっさりと、時折突っ込みながら書いていくのでサクサクと読めて、おもしろい。しかし川端、変な人だろうとは思っていたが、全然人間的な魅力のない人だったんだな……。ノーベル文学賞については、川端は三島は全く眼中になくて、敵視していたのは以前からそりが合わなかった谷崎だったという話は、なるほどと思った。いろいろ言われる自殺の原因は「ノーベル騒ぎが治まって寂しくなったから」という。寂しくて死ぬ、ウサギか(ウサギだっけ?)。
川端康成伝 - 双面の人

川端康成伝 - 双面の人