ジョン・ロンソン『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』(光文社新書、夏目大訳)。新書のわりにはかなり分厚いけど、分析や論ではなくあくまでルポ形式で、なかなかの筆捌きなのでグイグイと一気に読み進めた。Twitterで問題発言をしたり、仕事でやらかしたりした人に対して、正義や善意が集まる事で起こってしまう公開羞恥刑を、取材やインタビューなど具体例を挙げて描いている。
よく私たちが目にする炎上は、ほとんどが軽はずみなどから始まっている。それはそれで問題だが、善意や正義感が暴力になる事、軽はずみで追い打ちをかける事、どこかで赦し再生のチャンスが必要である事など、当たり前なのに(特にネットだと)忘れがちな事がたっぷりと書かれている。書かれているんだけど、なんか著者も著者で危うい人だなと思った。この人もいつかやらかしてしまうのでは……というか、もうやらかしてはいるんだよな。それほど燃えなかっただけで。
公開羞恥という点でいえば、まさにいま話題の白人至上主義デモにも言える事で、写真から個人を特定して吊るし上げをしているんだけど、先日間違いを犯したその責任はどうなるのか。また、そもそもあなたたちに何の権限があっての正義と善意の吊るし上げなのか。もう一つ付け加えれば、誰かの下半身事情を暴露するというのは、本当に必要な事なのかね。特にメディアがやるべき事か。Netflixのドキュメンタリー『メディアが沈黙する日』の題材となったホーガンのセックススキャンダルに関しても思った(ホーガンの場合は人種差別発言もあったからなんだけど)。まぁメディアなりの理屈はあるんだろうけど……知りたいもんかねぇ?
- 作者: ジョン・ロンソン,夏目大
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/02/15
- メディア: 新書
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