スティーヴン・キング『ミスター・メルセデス』(文藝春秋、上下、白石朗訳)。キングの小説は数冊読んだ程度なのだが、今回は珍しく買って読んでみた。キング初の真っ向勝負ミステリーという触れ込みだが、わりと彼ならではの変化球でもあると思う。何かを得て、何かを失う。探し求めていたものを手にした時にはそれは変わっていた、というハードボイルドの形ではあるんだけど、単に謎解きや凶悪犯罪者を追い詰めるだけでなく、社会からはみ出ている人物たちの格闘物語でもあるからだ。
巨匠さすがの筆使いでグイグイ読ませるけれど、もうちょっと削ってもよかったかな。三分の二くらいに。それでも、下巻の中盤以降の畳み掛けには引き込まれた。本書の原作が出たのが2014年。次作は2015年、三作目は2016年にすでに発売されているそうな(邦訳も順次出るとの事)。こんな分厚いのを一年ごとに書けるのか。筆が早いというか、旺盛というか、それでエドガー賞を受賞していて質もいい、さらに他の作品も書いている……キングはすごいなぁ(凡人の感想)。
- 作者: スティーヴン・キング,白石朗
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/08/22
- メディア: 単行本
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