不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ厚い本と薄い本

 スティーヴン・キング『ミスター・メルセデス』(文藝春秋、上下、白石朗訳)。キングの小説は数冊読んだ程度なのだが、今回は珍しく買って読んでみた。キング初の真っ向勝負ミステリーという触れ込みだが、わりと彼ならではの変化球でもあると思う。何かを得て、何かを失う。探し求めていたものを手にした時にはそれは変わっていた、というハードボイルドの形ではあるんだけど、単に謎解きや凶悪犯罪者を追い詰めるだけでなく、社会からはみ出ている人物たちの格闘物語でもあるからだ。
 巨匠さすがの筆使いでグイグイ読ませるけれど、もうちょっと削ってもよかったかな。三分の二くらいに。それでも、下巻の中盤以降の畳み掛けには引き込まれた。本書の原作が出たのが2014年。次作は2015年、三作目は2016年にすでに発売されているそうな(邦訳も順次出るとの事)。こんな分厚いのを一年ごとに書けるのか。筆が早いというか、旺盛というか、それでエドガー賞を受賞していて質もいい、さらに他の作品も書いている……キングはすごいなぁ(凡人の感想)。

 岸政彦・雨宮まみ『愛と欲望の雑談』(ミシマ社)。薄い冊子のような本だが、中身はわりと社会学的な補助線が引かれていて、ふむふむと頷きながら読んだ。まぁあくまで雑談ではあるけれど、二人の対話がなかなかスウィングしており、よかったです。もうちょい踏み込んだものを読んでみたくなったので、またやってください。
愛と欲望の雑談 (コーヒーと一冊)

愛と欲望の雑談 (コーヒーと一冊)