ティムール・ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』(上下、河出書房新社、森内薫訳)。おもしろくて上下巻とあったが一気に読んでしまった。時折り声出して笑ってしまった箇所すらあって、しかしそのたびに「おもしろい」と感じてしまった読者に「笑ったな、オマエ」とその意味をつきつけてくる。ナチ・ヒトラーを魅力的に書いているのだから批判もあったらしいが、著者はそれに自覚的なのだから強かである。
言うまでもなくここで問われているのは、過去を(そして現在を)どう見るか、どうとらえるのかという歴史認識である。と同時に、人間ヒトラーを魅力的と思えるように書く事で、過去の再検証(単純な肯定・否定ではない)を促しているのだ。わりとここは重要なポイントだと思う。何故なら、いま日本をはじめとして戦後国際秩序なるものが崩れ始めているのだから。また一方で、メディアとコミュニケーションについての小説でもある。『チャップリンとヒトラー』を読んだ後だけに、ここは強く感じた。
と、まぁかなりきわどい手法で書かれているが、それは一応成功していると思う。若干中だるみもあったけれど、最後の最後に辿り着くのがあの一行だったもんで、「おいおいおい、すげえな、おい!」とちょっと衝撃を受けた。これがどういう意味の「すげえな、おい」なのかは、皆様読んでのお楽しみという事で。映画化されるそうだが、もちろんドイツ語でやるよね? そうじゃなければ意味がないよ。
- 作者: ティムールヴェルメシュ,森内薫
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2014/01/21
- メディア: 単行本
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