本屋で見かけて、そういえば読んでいなかったとスティーグ・ラーソン『ミレニアム2 火と戯れる女』(上下巻、ハヤカワ・ミステリ文庫)を手に取った。「むしろ2、3が本番」とは聞いていたけど、映画を見て満足してしまっていたせいか、あまり期待せずに読みだしたのだが、これがまぁおもしろいのなんのって。
脳内キャスティングは映画のまま。2では上巻後半からアクセル踏みっぱなしで、何故彼女があんな格好をし、あんな振る舞いをしているのか、過酷な過去、切実な思いがよくわかったし、だからこそ彼女の闘争精神がどれだけ気高いのかがわかった。リスベット無双、ミカエル控えめ。
すぐさま『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』(上下巻、ハヤカワ・ミステリ文庫)に取り掛かったわけだが、さらに加速、フルスロットルで物語は展開していく。複雑に絡まっていく事件、増えていく登場人物と、下手したら混乱しがちなところをワンパラグラフを短くし、小刻みにする事でわかりやすくさせ、かつスリリングさを増大させていく展開はお見事。下巻のクライマックスは裁判劇で、基本的に会話しかない地味なもののはずが、興奮してしまったよ。これは純粋にうまいと思う。
そして地続きとして国家レベルの事件を展開させながら、一方で一人ひとりの女性の戦いを並行して描き、あくまでも《核心は結局のところ、スパイとか国の秘密組織とかじゃなくて、よくある女性への暴力と、それを可能にする男ども》で、そいつらを叩きのめしていくタフな女性たちがたまらなくかっこよかった。「現実は冷たく、厳しい。だけど、戦う価値はある。だから、戦え」。そう勇気づけられている気がしたよ。……まぁ、正直言って最後までミカエルの、男としての性的魅力はようわからんかったけれど(人間としてはわかる)。
一応大きな事件は解決したものの物語は未完で、ミカエルとリスベットをはじめとした人間関係や、一部の(しかし大きな)謎は残されたまま。それはそれで余韻があるけど、やっぱり続きが読みたい。だいぶ遅れて今更だけど、作者がもうこの世にいない事が残念でしかたない。
いやはや、楽しい読書だった。
ミレニアム2 火と戯れる女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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ミレニアム2 火と戯れる女(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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