不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

信じたものはまぼろしじゃない

 吉井和哉 吉井武道館2007
 アルバムツアーではなく、単発ライブというのは一本筋がないので散漫になりやすく、どこまでカッチリまとめれるかが難しい。今回は、オープニング2曲を前のツアーと同じにしたのは、一旦空気をまとめたかったのだろうな。
 思った以上にカッチリしているなか聴こえてきたのは“TACTICS”。好きな曲だし、久々に聴けて嬉しいのだが、逆に淋しくもあった。というのも、演奏も客とのやり取りも『SO ALIVE』に入っている“TACTICS”と同じだからだ。演奏はまだしも、やり取りまで一緒だと……。
 相変わらず“ワセドン3”のライブ時の濃さはすばらしい。どこが「ご機嫌なブギー」だよ。後ろ向いてたし。
 カバーはまず“大都会”。昨日はスピッツ草野マサムネが来たそうだが、友達いないので今回はバーニーと。バーニー、歌うまいなッ! そして、この歌、こんなにいい歌だったんだ。
 続けて“HELP!”。スローにアレンジしたのはよかったけど、吉井の声とビートルズはちょっと合わない気がする。
 その後、歌われたのは“カナリア”。この歌を選ぶとはなぁ、としみじみしながら聴いていた。この2曲は、改めて歌詞を読んでみると、とても哀しく淋しい。悲壮感と切迫感。なのにきれい。
 散漫ではありながら、盛り上がって楽しかった。特に“FINAL COUNTDOWN”はキラーチューン。会場の照明が全部ついて、みんなで腕を上げ下げしながら歌う光景は幸せに満ちている。
 アンコールのバラードタイム。“TALI”は絶品だなぁ。
 続けての2曲目。イントロを聴いて「ああ、やめてくれないかな」と思った。前々から嫌な予感はしていたが、やっぱりやるのか、その歌を。
 一年前。同じ武道館のライブを見て、そして“JAM”を歌ったのを知って、俺はこう書いた。《「ソロで歌うべきではない」歌は一曲だけある》と。*1それは俺の願いだったのかもしれない。吉井はそんな事を思っていなかったのかもしれない。自伝の感想で「ミュージシャンとリスナーの間には、歌に対して差異がある」と書いたけど、こんなに決定的な差異が出てくるとは。
 吉井は歌った。アレンジを変えたアコースティックバージョンの“SO YOUNG”。俺は、どうしてもあのツアーと写真を思い出してしまう。時間が経てば、一つの純粋な曲として聴く事ができるのだろうか。聴きたいけど、聴きたくなかった。
 “SO YOUNG”で意識がぷつりと切れて、その後はちょっと遠のいてしまった。
 決して手を抜いていたわけじゃないだろうし、十分楽しんだ。だけど、正直、最高とは言い切れないライブで、どこか気持ちがバラバラだった気がする。自伝を出してすっきりしてしまったからか。


《かごの中であの夢は 一人だけの妄想にした
 たとえ空が晴れていても
 全然忘れてない 全然忘れてない
 あおむけで眠りたい》(“カナリア”)


《Help me if you can, I'm feeling down
 And i do appreciate you being 'round.
 Help me get my feet back on the ground,
 Won't you please, please help me?》(“HELP!”)

set list
00.Introduction
01.Do The Flipping
02.Biri
03.I WANT YOU I NEED YOU
04.HOLD ME TIGHT
05.ルーザー
06.黄金バッド
07.TACTICS
08.ワセドン3
09.大都会(クリスタルキング
10.HELP!(The Beatles
11.カナリヤ
12.NATURALLY
13.HIKARETA
14.マンチー
15.シュレッダー
16.Don't Look Back In Anger(OASIS
17.バラ色の日々
18.WEEKENDER
19.FINAL COUNTDOWN


en
01.TALI
02.SO YOUNG
03.BELIEVE
04.バッカ
05.トブヨウニ

*1:実は、他にもあるのだが、それはともかく。