不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

Why is the rum gone?


 パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールズ・エンド』鑑賞。監督はゴア・ヴァービンスキー、製作の名前で映画の宣伝になるのはこの人だけジェリー・ブラッカイマー。出演、ジョニー・デップオーランド・ブルームキーラ・ナイトレイジェフリー・ラッシュジョナサン・プライスビル・ナイチョウ・ユンファ、そして噂の“あの人”も。
 上映時間が3時間くらいあって、少々長過ぎた。もっと、グッと濃縮させた方がいい、というのを最初に書いておいて……。
 七つの海を渡り歩く、自由に駆け巡ってきた海賊達。敵対するものだけでなく、掟や契約、呪いと闘ってきた。海で生き、海で死ぬ者達の物語。三部作の完結編は、壮大な死闘となった。
 『呪われた海賊たち』は一話完結だったが、2作目の『デットマンズ・チェスト』が「起承」で、今作が「転結」。ちょっと設定や細部を忘れてしまっていた。しかも、伏線を矢継ぎ早に回収し、テンポよく進んでいくので、うっかりと気を抜けない。
 今作はとにかく「結」に辿り着かなければいけないので、少々細部が雑だった。雑というのは悪く言い過ぎかもしれない。細部が魅力的なので、あれで終わらせては勿体無いと思うのだ。例えば、デイヴィ・ジョーンズの過去と愛した女の話、シンガポールの海賊サオ・フェン。サオ・フェンなんて、特に丁寧に描けばもっと立ったキャラになったはずだ。せっかくチョウ・ユンファを起用したわけだし。勿体無い。
 何より、ジャック・スパロウのシニカルな部分がたいぶ消えていた。その影響で、彼の「何をしてかすかわからない、でも絶対に勝つであろう」という根拠のない「万能感」が薄い。それでも、かなりぶっ飛んでいたし、ステキ過ぎたわけだけど、『呪われた海賊たち』が一番輝いていたなぁ。
 と、文句ばかりだが、退屈しないし、まさに“アトラクション”みたいな映画で楽しかった。
 様々な駆け引き、そこから生じる人間ドラマ。華麗な人物相関図を組み込みながら出来上がっていく海賊vs東インド貿易会社という図式。そんな複雑な関係でありながら、子供でも楽しめるド派手な戦闘シーン。
 やはり最後の闘い直前のシーンは圧倒的。そこから始まる怒涛のアクション。荒れた海を舞台に、二艘の船が展開しあい、大砲を打ち合い、剣での斬り合いへ。そんな中でもユーモア溢れるやり取り。何より、エリザベス・スワンとウィル・ターナーの結婚の儀を取り計らうのが、“アイツ”だというのが粋でステキだ。
 ジョニー・デップは相変わらずステキだが、今回はバルボッサ演じるジェフリー・ラッシュの好き放題なはしゃぎっぷりがよかった。とても『シャイン』のデイヴィッド・ヘルフゴットを演じた人と同人物だとは思えない。この二人のやり取りが最高。
 これで完結なわけだが、実際に完結したのは実はエリザベスとウィルの物語だけで、ジャック・スパロウの(バルボッサ以下、海賊の)物語は全く終わっていない。再び銀幕上に現われても不思議ではないし、どこかそれを期待している。ま、このまま、また海へと旅立っていったと思って終わるのが、一番いいかもしれないけど。
 最後に。“あの人”が出てきた時は思わずニヤッとしてしまった。続けて楽器をほんの少し奏でたので、さらにニヤニヤしてしまった。