不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

ジェーン・ドウの解剖/いつどこのだれであろうとも


 傑作『トロール・ハンター』はまぐれではない、ここでもなお孤高の志を貫き通した作品が産み落とされた。凡庸なホラーにありがちな単なる血みどろ大騒ぎではなく、人間のドラマとして腰を落ち着かせながら、遠いところへ連れて行く密室劇。一般には忌避されがちな遺体を直視し、その身体を切って、剥いで、調べて、情報をかき集めて推測し、仮説を立て、真相に近づけば近づくほど、近づいたものが後戻りできない漆黒のどん底に叩き落とす。全編ほぼ演技する二人と動かない一人によって構成されているのにそれらが見事にかみ合いスウィング。毅然とした映画なだけに、本来なら最後のアレは蛇足でしかないのに、監督からのチャーミングなウインクのようであった。なんだか感動すらしてしまった。いまさらだが、必見。

パーソナル・ショッパー/君を見ている


 見えない「そこにある/ここにいる何か」に恐怖、興味、共感、親近感を抱く形で世界の輪郭をなぞったり、本質を射抜いたりするあたり、本作はオカルトやスピリチュアルではなく、ホラーと呼ぶのが正しいのだろう。何がわかって、何がわからないのか、何を感じているのかを、揺らめくように描いて、登場人物と観客とを同期させる手腕が見事。メールの文字、エレベーター、自動ドアなど、機械を使う事で「そこにいる」のが自然に見えて、生死の境界線をひょいと超えていた。いろいろとドキドキしたし、クリステン・スチュワートがかっこよくて見惚れたよ。