マーク・フィッシャー『資本主義リアリズム』(堀之内出版、セバスチャン・ブロイ/河南瑠莉訳)。サッチャー(そして安倍晋三)が言う「この道しかない」に「?」をつけて、資本主義は嫌だけど代替案もないしね、というある種の諦めを「資本主義リアリズム」と名付けて分析、論考した一冊。 見ての通り装丁はRadiohead『Hail to the Thief』のオマージュで(だよね?)、出だしは『トゥモロー・ワールド』と、映画や音楽などポップカルチャーの面から分析しているところが多い。わりと読みやすいんだけど、そのぶん切迫した思いや、諦観の重みがわかるので、結構しんどかったな。
何となくだけど、資本主義リアリズムの構造からジョゼフ・ヒース/アンドルー・ポター『反逆の神話 カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか』を思い出した。たとえば《ヒップホップと後期資本主義の社会的フィールドが互いに浸透し合う回路はむしろ、資本主義リアリズムがアンチ・神話的な神話と化すところと通底している》という箇所とかね。一応、打開策も書かれてはいるんだけど、イギリスに蔓延している鬱病に言及しながら本人もかかっており、果てに自殺している事を思うと、やはり重い気分にはなってしまう。それも含めて考えていかねばならないんだろうけど。野田努氏が詳しい書評を書いているので、そちらもどうぞ。 野田氏も言及しているが、《新自由主義は必然として資本主義リアリズムであったが、資本主義リアリズムは必ずしも新自由主義である必要はな》く、その綻びとしてトランプやEUから英離脱があったとすると、それはそれでその先も結構大変だよな、と思ったり。
- 作者: マークフィッシャー,セバスチャンブロイ,河南瑠莉
- 出版社/メーカー: 堀之内出版
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