クリスチャン・ヨプケ『ヴェール論争: リベラリズムの試練』(法政大学出版局、伊藤豊他訳)。「欧州人権裁、顔全体を覆うベールの着用禁止を支持」というニュースを見て、家に積んである事を思い出したのでパラパラと読んでみた。学術論文みたいで、かなり内容が硬くて読みにくく、正直流し読みで。
フランス、ドイツ、イギリスのヴェール事情からイスラムの存在によって試練を抱えるヨーロッパのリベラリズムの現状を見ている。三国がそれぞれ違った内実を抱えている中で、もっともイスラムとこじれた関係にあるであろうアメリカではヴェールは特に問題がなく、ヴェールだけでなく《ムスリム・マイノリティの統合にあたって国内的な問題を全く抱えていないという大きな矛盾の一つとなっている》そうな。
ヨーロッパ・リベラリズムにとってはイスラムとは根本的な挑戦であり、同時に矛盾でもあるという。という事は、根本的な解決はあり得ないと言うに等しい。せめてもの「最善」ですら、答えは出てこないだろう。これはかなりの難題を抱えているな、欧州は。他方、本書で書かれているのは当然ながら目立った事件や論であり、では一般のイスラム教徒の女性はどう考えているのかを見る必要があるだろう。たとえば(あくまでフィクションコミックだが)先日単行本が出たユペチカ『サトコとナダ』を読むと*1、ヴェールなど覆う布が彼女たちにとって重要であり、盾でもあるかがわかる。
国家や法という大きな枠で括ろうとすれば、必ず歪が生じるのは現代に生きる私たちはわかっているはずである。その構造を何とかするのはもちろんだが、結局のところ「対話」と「理解」が重要なのだ。こんなことは言うまでもない事のはずなんだけど。世界は白でも黒でも、何なら灰色でもなく、非常に多彩な色でできた、カラフルな世界にいるのだと思わねばならない。その色を認めること、無理に混ぜたら汚い色になってしまうことなどを自覚することが、対話であり、理解なのだと思う。
- 作者: クリスチャンヨプケ,Christian Joppke,伊藤豊,長谷川一年,竹島博之
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 2015/06/03
- メディア: 単行本
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- 作者: ユペチカ,西森マリー
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/07/08
- メディア: コミック
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