不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

この日にこれを読み終えた

 ブレイディみかこ『ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店。ちょうどいいタイミングで、今日の会社に行く電車の中で読み終えたため、イギリスのEU離脱国民投票を地続きの事として見る事ができた。
 本書は英国政治時事ネタ本で、正直言って誰かの発言や新聞雑誌の引用が多いのもあって(また引用する新聞や人物もだいたい決まっている)、内容は興味深いものの、一冊通して読むと疲れた。あくまでも「地べたから」というのがポイント。この著者はいつもちょっと論や筋の飛躍があるのが引っかかるんだけど、基本的にフラットかつ冷静な筆致は好きです。日本のレポートも本にするそうで期待。
 イギリスについての本を読むたびに思うのだが、(俺の不勉強が第一だとして)いま諸悪の根源のように言われるサッチャー・保守党政権だが、ではその前夜のイギリスは「ゆりかごから墓場まで」の社会保障が破綻していたのではないのか、リベラルはその時何をしていたのか、という事がわからん。あの時ホームレスが溢れ、荒廃寸前だったという話を聞くと、とてもあのままでよかったのだ、とは言えないと思う。つまるところ、政治は状況打開のカードを持っているかどうか、なのだ。
 何にせよ、この投票結果が実際にどういう動きへと繋がるのかはまだわからない。一方でスコットランドの独立示唆もあれば、スペインの近く行われる総選挙にも影響があるだろうし、ギリシャの動向も気になるし、何ならAIIB絡みで中国だって動いてくる。言うまでもなくアメリカはあんな感じだし、ロシアもいるし、なかなか混迷の時代になろうとする中で、日本は参院選都知事選を迎える。
 ところで実は本書で一番おもしろかったのは、岩波書店の渡部朝香という編集者が、この本の企画を社内会議でプレゼンする際、The Clash『London Calling』をかけながら行った、というあとがきのくだりだったりする。ロックンロール、かっこいい。そしてそれを許して企画を通す岩波も、やるじゃない。