このタイトルで帯には《炒飯の名手にして一流のスナイパー》とあれば炒飯が躍動する事を期待しないわけにはいかないであろう、台湾のハードボイルド・スリラー。緊迫感ある狙撃の瞬間、引退間近の刑事の東奔西走、蠢く陰謀、友情・恋愛・家族愛がもつれる中でたどり着く真実……といったなかなか奥行きのある小説ではあったのだが、問題は、そう、炒飯である。序盤にサラミを使った炒飯が登場し、これがとてもうまそうで今後の炒飯の登場にも期待が上がったのだが、何と炒飯はその後全然登場しないのだ。全く出てこないわけではない、作る事もあったし、おそらくここでキーとして登場するだろうなというところもあった。だがしかし、もっと炒飯があってもいいのではないか、読み終えて思わず日記タイトルの『インヒアレント・ヴァイス』のビッグフットばりのセリフを声に出してしまった。一番は謎を解く鍵、あるいはドラマのクライマックスに関わってほしかった。それが難しいのならば、地味でもいいから様々な種類の炒飯を要所要所に出すというのはどうだろう。勝手に期待したと言われそうだが、「炒飯」狙撃手とまで銘打っているのだから、炒飯をもっと主役にしてほしかったなと思う。続編も出るという話だが、それは炒飯はもう関係ないのだろうか、それともまた『炒飯××』というタイトルになるのだろうか、後者ならば次こそ炒飯の活躍を期待したい。