不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

三月四日、フェイブルマンズ

 隙あらば映画館に行っていた時と違い、いまは本を読みたいダラダラしたいという欲求の方が強くなってしまい(特にここ数年)、しかしそれでも映画は映画館でなるべく見たいという思いは確かにあるので、休みのたびに迷っている。今日も朝から悩んだが、たまたま見たい映画がネット予約なし全席自由席の吉祥寺プラザでの上映だったので、行って混んでいたらやめて空いていたら見ようという曖昧な態度での判断となった。結局ほどほどの混みようだったので、ここまで来たしなと選んだ作品はスティーヴン・スピルバーグの半自伝作品『フェイブルマンズ』

 見終わるや私の中の水野晴郎が「いやー、映画って、本当にいいものですねぇ」と思わず言い出すような映画であった。正直、幼年〜青年期の青春には全く興味はなかったし、見てからもさほど興味が生まれる事はなかったのだけれど、スピルバーグの映画愛というより(むしろ映画愛はそれほど感じない。幼年期に見た映画以外で鑑賞シーンはなく、撮影をしている場面ばかりだったので、映画制作愛と言うべきか)これから作る作品の原石をそこかしこに散りばめ、それを抜群のセンスで鮮やかに映し出すそのテクニックに脱帽。あくまで主人公サムが見ている世界だけなので映すところ映さないところがあるのだが、その差配がとにかく見事だし、複雑な感情をみなまで言わず演技と演出で見せるのはまさに映画。終盤の彼とのやりとりは本当にすばらしいし、愛嬌もあってお見事。カメオ出演は知らず、出てきた時に「マジかよ」と声に出してしまった。まぁスピルバーグの巧妙なテクニックを見せつける作品ではあるけど、それ以上ではない気もした。でも決して嫌いになれないのは、その愛嬌ゆえ。ラストショットのあれはずるいよ。しかし、百五十分はちょっと長かった、できれば二時間くらいでまとめて欲しかった。

 チャイを飲みながら井の頭公園を散歩し、そのまま井の頭公園駅前に行って下北沢に出る。軽く散歩をしてから、いつもの行きつけイタリアンで結婚記念日食事会。お疲れ丸十一年、十二年目もよろしくと、先日古本を売った金で豪遊。あれも食べようこれも食べようとひたすらうまいを言いながら喰いまくる。食べるスピードが早かったらしく、途中でシェフがこちらを見て「早っ」と呟いて慌ててメインの用意をしていた。あれもうまいこれもうまいとデザートまでフルコースだが、酒を飲まない二人なので(カミさんは病気を機にやめた)さほどの値段にはならず。

 よい映画によい食事、二人でニコニコしながら帰宅。