不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

ポール・ベンジャミン『スクイズ・プレー』/これが彼を見た最後の作品だった

 誰あろうポール・オースターの変名による正調ハードボイルド小説で、オースターの幻のデビュー作だという。オースターが違う名前でハードボイルド小説を書いていたなんて全く知らなかったが、もっともそれ以外のオースターの事もそれほど知っているわけではないのだけれど。文体はキメキメでかつ探偵の軽口・へらず口があまりに達者すぎてやや鼻につくも、当時からさすがの筆さばきで読ませる、野球の使い方も巧妙。そもそも三十年以上前なのだから、ある程度コテコテになるのも仕方ないのかもしれない、文章がうまいからこその味なのは確かだし。この路線の次作も読んでみたかった、と思ったが『幽霊たち』は一応探偵小説か、いま本棚の方を見たらちゃんと刺さっていた。『幽霊たち』以外には『ムーンパレス』と『孤独の発明』がある(全て文庫版)。他のももちろん読んだ事があるが、最近の小説はかなり御無沙汰なので新潮文庫で同時発売された『写字室の旅/闇の中の男』に手を出してみるかなぁ。いやその前に、まさにこのペンネームの人物が出てくる『スモーク』を見直すか、いまどこかで配信されているだろうか。