不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

いしいひさいちの新たな傑作

 いしいひさいちののちゃん』の新刊13巻が出る事は知っていたが、忙しさに襲われていたら買うのをすっかり忘れてしまった。漫画は九割くらい電子書籍で買うようになったので、毎日本屋に行くわりには漫画売り場に行かずに店頭に出ていても気づかず、七月からひと月近く経ってようやく購入した。この「ののちゃん」連載内で連載されていた「吉川ロカ」シリーズをご存じだろうか。ファドの歌手を目指す女の子の話で、4コマではあるけれどストーリー漫画である。とり・みきがこれのファンだと公言しているが、私も好きで「ののちゃん」内で時折登場するのを楽しみにしていたのだが、朝日新聞からクレーム(?)がついたのか、いきなり終わってしまった、連載内連載が打ち切りというのは世にも珍しいのでは。本人も残念に思っていたのか、自身の同人誌やHPにちょこちょこと書いていて、このたびそれらをまとめ加筆・修正、追加をして一冊の本になった、それが『ROKA』である。早速注文して、ゆっくり読むつもりがつい一気に読んでしまったのだが、いまさら私のようなものが言うのもなんだが、いしいひさいち、メチャクチャ絵がうまく、何より漫画がうまい。はっきりいって絶品、名作である。ギャグ漫画家歴五十年を迎え、朝日新聞で4コマを一万回以上掲載している巨匠が、こんな青春の、さまざまな感情の渦を描いた漫画を描くとは思わなかった。しかも読み終わった後の余韻といったらない。何よりも確かにいしいひさいちの漫画なのである。もしかしたら現在だからこそ描けたのかもしれない。感動した、ぜひご一読いただきたい。

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