不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

私が聞いていない音

 仕事用ICレコーダーに見知らぬ五時間分の音声が録音されていた事を書いた。

 私が聞いているはずの音 - 不発連合式バックドロップ

 レコーダーからこのデータは消去したのだがそれほど容量が減っていないのに気づいて、おかしいなとよく見たら、五時間どころか十二時間という長い録音があって驚いた。いつの間にそんな録音を、そして何故それに気づかないのか。

 開始時間を見たら夜二十時頃から朝の八時にかけて。どうやら帰り支度をした際に鞄の中のICレコーダーの録音が開始されたらしい。またもや歩いて帰る音、電車内の音が聞こえる。自宅に着いて鞄を置いた後は無音になり、風呂上がりに部屋に戻ってきて再生した音楽がうっすら聞こえてくる、何を聞いているのかはわからない。カタカタ日記を書いている音、猫の「ニャー」、風呂から上がったカミさんとの会話はよく聞こえる。俺が石岡瑛子の評伝の感想を話している。会話を終えて、音楽を止めて、寝室に入る、猫の「ニャー」が数回ほど聞こえてからはずっと無音で(全部しっかり聞いたわけではない、全部聞くのに十二時間必要だ)、このまま朝を迎えたのだろう。前に書いた五時間は俺が聞いていたはずの音だと書いたけれど、ここには俺が聞いていなかった音が収められている。もし全部再生してみて、俺が寝ている間に妙な音、いや、音どころか声なんかが入っていたらどうしよう。聞いていない聞こえていないのだから知らないままがいい、これ以上は聞かない。