不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

世界文学の21世紀/出会いを求めて

 翻訳家の都甲幸治が書いたエッセイとトークショーをおさめた一冊で、その時その場で即興的に書かれたものだが通して読むと何かしら一貫性があった。いろいろな国の小説を読んで、またそれを誰かに紹介する事で、あるいは他ジャンルの人と話す事で他者の存在と多様性というものが浮かんできて、いま内にこもりぎみの自分の趣味嗜好(思考)が外側に開かれたような思いになった。ちょっといろいろ読んでみたくなった、年末の読書のテーマにしようか。ところで寺尾紗穂との対談のタイトルが「きちんとしたものって窮屈ですよね」で(目次は「きちんとしたもの」ではなく「ちゃんとしたこと」になっているな)、言わんとするところは逸脱したものへの視線であり、逸脱する事のおもしろさであって、「きちんとしたもの」を否定しているわけではないとわかっているんだけど、わりあい「きちんとしたもの」になってしまいがちでヒップに憧れるけどそうはなれないスクエアな俺としては、その窮屈さからどう抜け出せばいいのやらといつも悩む。そんな事を言っている時点で窮屈なんだともわかってるんだけど、と一人でぐるぐる考えるところに外部からの刺激を受ける事で少しだけ外に出て何とか窮屈から抜け出しているのかもしれない、面倒くさい話だが。この本もそんな刺激の一冊。