不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE -DOME SPECIAL-

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 まさか万単位の有観客ライブを日本だけでなく、おそらく世界で初めて行うのがザ・イエローモンキーになるとは露とも思っていなかった。先駆けてやるのは、ジャニーズ系やアイドルあるいはEXILEグループなど、言い方がいやらしいが、大資本でファン層の厚いところではないかと勝手に予想していたのだが、しかしそれらのファン層は若いのもあって統率が取れにくく声があがってしまう可能性があるのでなかなかできなかったのではないか(俺の偏見です)。先の嵐のコンサートも無観客だった。かといってサザンオールスターズのような超ベテランになると今度は年齢層が高くて万が一感染者が出たら重篤化してしまうかもしれない。そうすると、ある程度分別のついた、かつ感染しても比較的重くはならない年齢層で、熱いファンがいるから配信でもそれなりに利益を出せるであろう、大会場を埋められるミュージシャンやバンドは誰かといった時に、イエローモンキーは適していたと言えるのかもしれない(エレファントカシマシの恒例、日比谷野音ライブも同じような意味で適していたとも言える。2バンドとも意地をもってライブを決行した)。

 これはあくまで結果論であり、他のミュージシャンやバンドがどういう決断をしているのかは知らないので安易に言う事ではないのだろうが、しかし何もうち(という言葉をあえて使うが)のバンドがこんな重大な責務を担わなくてもいいではないか、これまで様々なものを背負ってきたバンドが音楽エンターテイメント業界の明日の一歩までをも背負う事になるのは、ファンとしては大丈夫なのかなと心配になるのが正直な気持ちであった。ライブでのMCでようやく気づいたのだが、今回の東京ドームは先のナゴヤドーム、京セラドームに続く東京ドーム2daysの振り替え公演なのであって、あくまで30周年記念ツアー最終日なのだ。ツアーにケリをつけたかった。だから、再集結一曲目の”プライマル。”をこのライブの最後に行って、第二期(なのかどうか)The Yellow Monkeyを閉じて次に行きたかったのだろう。また活動休止ライブで奏でられた”メロメ”をここで奏でたのも過去の清算だったように思う、それができなかった悔しさは幾許か。

 何度も来ているバンドの何度か来ている会場だけど、妙な緊張感があった。声を出してはいけない──突き詰めれば禁止事項はそれだけなのだが、それがどれだけ重い事なのかはライブが始まってから実感できた。音響は客が半分で歓声がない状態を想定しきれなかったのか、イマイチでシンバルなんかはほとんど聞こえない。吉井和哉は曲中でもMCでも煽る事はできず、笑わせる事も難しく、無責任な事は言えないけれど悲観的な事は言いたくない、一体何を言っていいのだろうと悩んでいるのが手に取るようにわかり、観客は声をかけたいけれど声は出せず拍手では反応に一拍遅れるしどう対応していいかわからない。他のメンバーも違和感をはっきり覚えたであろう、スタートしての数曲はエマもアニーも演奏がもたっていて唯一ヒーセだけが正常を保って演奏に一本筋を入れていた、さすがである。一回目の暗転以降くらいからは演奏も歌もペースを取り戻し、どんどん調子を上げていき、ライブ単体としては決して悪いものではなかったはずだ。

 ただメンバーも観客も、そして見えないところにいるスタッフも、纏う空気がこれまでにないものであったために、ライブを何か別のものへと変えていたように思う。全ての人が戸惑い、混乱する中で、音楽だけがダイレクトに響き、誰もの耳に届いていた。そしてみなが戸惑っていながらも、間違いなく全員が「このライブを成功させる」という共通の思いを抱えていて、よく言われる「ライブはみんなで作るもの」をこういう形で実感するとは思わなかった。決して悪いパフォーマンスではないのだが、率直に言ってアッパーな曲はどこか乗り切れないところがあって、何とか手拍子で気持ちをリンクさせて盛り上げていた。そんな中、かつて自分たちを奮い立たせようとした“パール”が気を吐いていたように聞こえた。一方でミドルテンポ、バラードが主軸となるのだが、その中でも祈りを捧げるような“球根”と、この世界を真っ赤に染めた“JAM”がすばらしくて泣きそうだった。そして、曲の感想でも書いたけれど、こういう時に(またそのために)作られた曲ではないはずなのに、こういう時に聞きたかった曲である”未来はみないで”が胸にしみた。

 それにしても歓声をあげられないフラストレーションはすごいものだった。拍手では限度ある、手が痛くなってしまうし。腕につけるライトは歓声がわりなのだろうが、もうちょっと使い方を練ろう、BUMP OF CHICKENのチームラボに比べると稚拙。しかし、そういったトライ&エラーのためのライブでもあるわけで、「ここから始めます」、まさにここからがスタートなのだ、イエローモンキーにとっても、音楽エンターテインメント界にとっても、音楽ファンにとっても。

 吉井和哉は言った。「今回の東京ドームは本来の望むべき形じゃないかもしれないけど、THE YELLOW MONKEYの勲章として、自分の歴史に刻みます。また今日から新しい時代が始まったと思います。一緒にまたがんばりましょう」と。これほど不思議で、感動的なライブもそうそうないだろう。有難うイエローモンキー、有難うスタッフ、有難う自分を含めた観客たち。ここから始めよう。


THE YELLOW MONKEY – 未来はみないで (Official Music Video)