不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

舎弟たちの世界史/スマートフォンから指を離して聞いてくれたまえ

 韓国の現代小説は一時期何冊か立て続けに読んでいたのだが、ちょっとしたブームになると共に少し冷めてしまって(ブームに対しての反感めいたものがあったわけではなく、そんなものは持っても仕方がない、ブームになると玉石の石の方が増えてしまっていくつかその石を引いてしまったので、それで少し置くようになっただけ)、まぁそれでもたまに読んでいたのだが、このイ・ギホ『舎弟たちの世界史』(新泉社、小西直子訳)はなかなかよかった。しつこいほどのディテールの書き込み、独特の比喩とユーモアの連発、丸括弧を多用した文体、そして執拗とも言える読者への語りかけ(「聞いてくれたまえ」)で、いつしか他人の物語を自分の物語へと変えていく演出手腕がすごい。歴史のうねりに巻き込まれた一般人という視点の引きと寄せを交互に繰り返し、マクロとミクロの二つで語っているのもいい。それでも中盤までは正直いまいち乗り切れないところがあったのだが、第二部第三部と進むにつれて、ユーモアと悲哀のブレンドが絶妙となりいつしか読みふけた。「舎弟」を個人と国家(アメリカの舎弟になってしまう韓国。それは日本も同じと言える、いや、より深刻かもしれない。だが日本でこの日米関係を小説にしたとして、このようなユーモアと悲哀で書けるだろうか、書ける作家が出てくる事を願いたい)の二つの観点で見出したのもうまい。人生は近くで見ると悲劇だが遠くから見れば喜劇、とあっさりとはとても言えないのが人生である。

舎弟たちの世界史 (韓国文学セレクション)

舎弟たちの世界史 (韓国文学セレクション)