不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

思いを思い出せない

 「おまえが読みたいっつってた本が届いたから取りに来てええで」というメールが来たので、会社帰りに久々に図書館に寄る。中には入れず、出入り口にカウンターが設置されており、そこで図書館員にカードを渡して照合し予約本をとってきてもらうシステム。前の人から2メートル離れて自分の番を待ちながら、貼られてる告知を読む。「すでに予約していて届いた本は借りられる」「新規予約はもう少し待ってて」「図書館に戻ってきた本は72時間放置した後、消毒してから次の人に渡す」といった旨が書かれていた。きっとよく理解していない人も来て、揉める事もあろう、受け取る時に「有難うございます、お気をつけて」と小さく声をかける。中に入られるようになるのはいつかはわからなかった。予約できるだけマシではあるのだが、新旧の本が棚にずらり並んでいるのを眺めながら思ってもみない本、知らない本を探すのが図書館の最大の楽しみなので本格的な再開が待ち遠しい

 借りたのは二冊で、テッド・チャン『息吹』と河口俊彦大山康晴の晩節』。前者は買ってもよかったのだが、先に図書館で検索したらわりと早く手元に来そうだったので予約し、あとちょっとといったところで閉館になってしまい、その間に俺の番が回ってきたのでここまで待ったのならと今日に至った。後者は、確か将棋の記事だかブログだかを読んでそこからたどり着いたはず。誰も借りていなかったのですぐに届いたがそこでやはり閉館となり、まぁキャンセルする事はないかとそのまま今日まで待った。『息吹』は読みたい気持ちがまだたっぷりあるのだが、『大山康晴の晩節』は正直もう薄い。ふと「読もう」と思った本で、とても軽い思いだった。読みたい読もうと予約した二ヶ月前の気持ちをもう思い出せない。もちろんせっかく待って借りたのだし、改めて手にして楽しみになった部分はある。ただ、確かにあったはずの「読んでみっかな」というささやかな読書熱がこの騒ぎの中で消えていってしまった事、それがちょっとだけさみしかった。