不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

『ザ・シェフ』を読んだ

 『ザ・シェフ』が電子書籍全41巻のうち30巻まで一冊11円だったのでその30巻まで買って読んだ。この漫画はいつの間にか存在も内容も知っていて、近所の蕎麦屋か床屋か喫茶店かでたぶん読んだのだろう、そういう漫画としては『こち亀』『ゴルゴ13』と肩を並べる存在だと思うが、この二作に比べると格が落ちざるを得ないのは何故だろう、東山紀之主演でドラマ化もされたのに、見た事ないけど。

 何故もなにも、結局この漫画は『ブラック・ジャック』の料理版でしかないからだ、原画か原作かどちらかの人もそう言っている。言うまでもなく名作『ブラック・ジャック』に比べれば劣ると言わざるを得ないものの比較対象が悪すぎるのと、扱っている題材が料理というのがネックだ。ブラック・ジャックは医者だから命を扱い、時に患者は死ぬ事もある、ハッピーエンドもバッドエンドも酸いも甘いもあって、清濁併せ呑むところが魅力だ。ところが味沢匠(主人公)はあくまでシェフでしかなく、どう頑張っても料理しか出てこない、さらに凄腕だからうまいものしか作らない。いついかなる場合でも、うまいものを喰って喜ばない、嬉しくない人間がいるだろうか。うまいものが出てくるこの漫画は、最後にはいい話にならざるを得ないのである。単体の料理の求道だったらまた違ったかもしれない。

 味沢は毎回誰かの悩みを聞いて、ちょっとアドバイスをしながらも「いずれにしろ私には関係のないことだ」と言って突き放し、でもそのあとで料理で背中を押したり気持ちを変えたりして、だけどそのお礼を言われると「何の事やら」ととぼける、いつもこれである。自分でやっていて恥ずかしくならないのか、それとも天然か、実は人助け大好きなのか。どの話もベタで、30巻どころか3巻読めば、出だしだけでこの話がどういう展開パターンになるかがわかる、水戸黄門的な漫画と言えよう、そんな漫画なのに41巻も出て、続編も20巻くらい出て、さらにその後にも何冊か出たそうだから不思議ではある、そんな漫画だからか? タイトルがそのまま『ザ・シェフ』とストレートなら、主人公の名前も「味」沢とえらく単純だ、『ブラック・ジャック』が『ザ・ドクター』だったらヒットしただろうか、したかもな、『ブラック・ジャック』だって別にひねったタイトルでもないし。

ザ・シェフ 1巻

ザ・シェフ 1巻