不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ小説、海外

 日本人作家と海外の作家とをわける意味は特にない。
 ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』(新潮社、岸本佐知子訳)。ズレて痛い人間たちが、二転三転怒涛といっていい展開で各々の人生を練り歩く様を、「みんなそうなんだよね」と囁くような真摯で誠実ともいえる筆致で描いている。ドキュメンタリーのような『あなたを選んでくれたもの』がよかったので本作も手に取ったが、やはり彼女の小説は俺には正直合わない、合わないんだけど、しかし読めてよかったと思う。特にこの個所に行き着いた時、もう、何かが、鷲掴みにされた。

それから戻ってきてまた彼女の腕の中にもぐりこみ、こんこんと眠った。朝はどこかで迷子になっていた。二人このまま永遠に寄り添って、ずっとさよならを言いながら、いつまでも別れない。

最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス)

最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス)

 デイヴィッド・ゴードン『用心棒』(早川書房、青木千鶴訳)。「ハーバード中退、元陸軍特殊部隊、愛読書はドストエフスキー」という帯文の惹句にピンと来たならオススメはする、ナイスな要素てんこもりで、怒涛の展開、あっという間に楽しみながら読み終えるだろう。ただこのてんこもり要素を見てわかるとおり、《サービス精神旺盛、詰め込み過剰の作家》(杉江松恋氏の解説)なため、俺にはいささか過剰すぎて胸やけもした。もっとストイックさを求めたい。一番物足りなかったのは、タイトルでもある用心棒(THE BOUNCER)要素が薄かった事。もっと用心棒としての役目や大暴れ、あるいは信頼や関係の構築などを読みたかった。それでも本作はシリーズ一作目の紹介みたいなもので、むしろ本番はこの後の続編になっていくのではないかと思うので、ひとつよろしくお願いします。映像化してもいいと思うよ。
用心棒 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

用心棒 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)