不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ小説

 深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房。やー、おもしろかった。戦争と差別がある(あった、いやまだそこにある)生活を細やかに書き込んだディテールによって根底をしっかり支え、それぞれ違った過去を抱えた者たちに容赦なく追ってくる絶望に声を失いながらも、問われる私たちの行き先を探る。『戦場のコックたち』ではまだ硬さが感じられたが、本書は文章が伸びやかで、 構成もよく練られている。終盤ページをめくって、「ああっ!」と声が出るほど。ただ、もうちょっと刈り込んで短くしてもよかった気もするし、ミステリーとしては些か謎、疑問が残るところもあった。例えば彼の動機とか、心の動きとか。しかし、戦争をこういう視点とスケールで描けるのか、しかもおもしろく、と感心したのも確か。容赦のないビターな作品だった。最後に余談だが、参考文献があったって読後感は変わらないよね。*1

ベルリンは晴れているか (単行本)

ベルリンは晴れているか (単行本)

 町屋良平『しき』(河出書房新社。高校生たち思春期の意識の動きや流れ、心と肉体のリンクと遮断、自分の外部と内部また自分と他者の接触と拒絶と交流を繊細に描写していて、好きではないけど、おもしろかった。俺はどうだったかなぁなんて思い出そうとしたけど思い出せなかった、自分のあの頃を書いてみたくなった。
しき

しき

*1:分からない人は『美しい顔』をめぐる荻上チキ氏の言葉を読んでください。