不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ性の小説

 王谷晶『完璧じゃない、あたしたち』(ポプラ社。女性たちの23の出会いと別れ、最後ではない最初と途中の物語集。多彩なシチュエーションを練り上げ、見事な文章で綴られており、胸にしみたり、胸をつかれたりと脱帽。でもワンシチュエーションを長篇で読んでみたいというのもまた正直な感想。個人的には末尾に置かれた「タイム・アフター・タイム」がベスト、全編まさに「完璧じゃない」「あたし」「たち」。

完璧じゃない、あたしたち

完璧じゃない、あたしたち

 古谷田奈月『無限の玄/風下の朱』(筑摩書房。前者は男、後者は女という性への祈りにも通ずるはずの、呪いのような小説。設定はやや特殊でミニマムだけど、構造や文体はいたってオーソドックスで、正面から性の先へいこうと試みている。中盤まではよかったけど、終盤はあと一歩かなと。次作に期待。
無限の玄/風下の朱 (単行本)

無限の玄/風下の朱 (単行本)