磯部涼『ルポ 川崎』(サイゾー)。川崎のあの殺人事件にまつわるルポルタージュだが、真相を解明するのではなく、深層へと潜り込んでいく一冊。著者のフィールドである音楽(ヒップホップ)を軸に、人脈を駆使して人と会って話を聞きだすのが、よくぞここまで聞きだせたものだと感心するし、その言葉の強さと重みをずっしり感じる。正直、俺は川崎には行った事がないし、出てくるラッパーたちも知らない。だが、知らない俺にもビビッドに彼らの姿が見えてくる、写真もいい。安易な肯定否定ではなく、《そこに差し込む光のようなもの》(エピローグ)があった。分断の先へ、音楽、そして政治の力と役割を思う。実はこういった地域が持つ特殊性というものは、どこの地域にもあるものなのだろうとも思った。質や形が違うだけで。そういった特殊性は、大事なものであると同時に、呪いのようなものにもなるのかもしれない。俺も根無し草ではあるが、いまだに故郷に対する妙な気持ちは残っているし。
- 作者: 磯部涼
- 出版社/メーカー: サイゾー
- 発売日: 2017/12/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: 檜垣立哉
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