ベ・テス『北野武映画の暴力』(クオン)。サム・ペキンパー、深作欣二の暴力と比較しながら北野武の初期三部作『その男、凶暴につき』『3-4×10月』『ソナチネ』の暴力を論ずる。筆者は韓国人で、日本で書かれた論文が元らしく訳者の名前はなし。
視点はあくまで暴力だが、そこから「北野武が描く男と女」や「暴力映画とポルノグラフィー」にまで思考を発展させたのは、読み応えあった。特に女性と暴力については、これまでになかったように思う。《暴力は、北野映画において、対話の手段になり、生への小さな意識を回復させるきっかけにもなる。あるいは、死の恐怖から抜け出させてくれる唯一の方法となることもある》。比較するのがペキンパーと深作だけで、これ以上広げるとまとめるのが大変だからだろうけど、もう少しいろいろと見てみたかったな。特に、国籍で括るのも乱暴だが、著者の母国である韓国映画の暴力との比較なんかあったらおもしろかったかなと。久々に三本とも見直したくなった。
ところで、134ページにある『ソナチネ』のあの鮮烈なエレベーターシーンの解説部分で、《(エレベーター内で)村川と高橋はお互いに顔を知らないから、存在に気付かず》と書かれていたけど、同じ組の敵同士であるこの二人が顔を知らないわけがないので、この箇所は思い違いか、あるいは書き間違いではないかな。
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