不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ本

 保阪正康三島由紀夫楯の会事件』(ちくま文庫楯の会発足から、あの事件までを追ったノンフィクション。あくまで事件にフォーカスを当てているが、そこから漏れるように三島の真面目で繊細な性格が見えてくる。むろん切実な思いも。事件を点ではなく歴史の線で見る広い視野で描き、おもしろかった。元本は1980年刊。いまでも三島の叫びは有効ではある。鮮烈で、過激で、急進的過ぎるとはいえ。三島の昭和のお終わりや、平成という時代への見方、考えを聞いてみたかったな

 栗原康『大杉栄伝: 永遠のアナキズム』(夜行社)関東大震災のドサクサに紛れて甘粕正彦に殺されたアナキストくらいにしか知らなかったので(著者の伊藤野枝伝は先に読んでいるが)、こんな人でこういう思想なのかとよくわかった。奴隷と権力の犬ばかりの世の中で求める自由。文で読めば魅力的な人だけど、近くにいたら大変だろうし、大杉のような人物ばかりだと困るし、また俺は大杉の行動を支える思想はほぼ持っていないんだけど、それでも彼のような人物も思想も必要だと思った。これが著者の本を初めて読むんだったら存分に楽しめたかもしれんが、以降出されて最近の著作を先に読んでしまっているぶん、文体に幾分の硬さがあってグルーヴが薄く思えてしまったので、内容はおもしろくてもちょっと不完全燃焼でした。
大杉栄伝: 永遠のアナキズム

大杉栄伝: 永遠のアナキズム