不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

裁きとは

 マイクル・コナリー『罪責の神々』(講談社文庫、古沢嘉通訳)。新作のたびにおもしろさの到達点だけでなく、テーマや奥深さの飛距離も更新していく稀有なシリーズ「リンカーン弁護士」最新作は、やはり最高傑作にして集大成。訳者あとがきによると本作以降五年間新作が出ていないそうだが、まぁ無理もないかと。
 今回はハラーは軽妙洒脱さが薄く、苦しんでいる。ハラーが対峙しているのは刑事弁護人として歩んできたキャリア(≒過去)だからだ。人は有罪(guilty)か無罪(not guilty)かを裁けるのか、弁護士としてのハラーの罪悪感(guilt)は……といった事を突き詰めながら、しかし法廷サスペンスとして存分に楽しませてくれる。登場人物が多く、複雑に絡まる人間関係ではあるが、読んでいけばちゃんと理解できるストーリーテリングで、さすがの筆さばき。ことほど左様に、確かに集大成ではあるんけど、これで終わるのは寂しい。次作を待ってますよ。