不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

パトリオット・デイ/ゴールが見えないマラソン


 事件(テロ)をあっさりと狂人たちによるものだと矮小化させて、薄っぺらい善悪問答をさせた上にその回答が「愛だろ、愛」で鼻白む事この上ないが、振り返ってみれば(劇中の順序は逆だが)、犯人の妻への尋問を善悪問答の極北に据え(「あなたに人権はない」なんてセリフが出てくるとは)、「証拠」になるから動かせないという少年の遺体に寄り添い続け見送ったあの警官の敬礼をその回答にするのが、監督ピーター・バーグの狙ったサスペンスや愛のピークだったように思う。
 事件の捌き方は見事なものだし、タスクフォースとしては些かトミー(マーク・ウォールバーグ)に託しすぎな気もしたけど、ジョン・グッドマンケビン・ベーコンJ・K・シモンズなどの芸達者で脇を固めて、爆弾二つ犯人二人でボストンが戦場と化す緊迫感は相当なもの。対テロの壮絶さ、アメリカの精神性が映画の本質なのだろう。助け合いから再生する。美しい。だけど、アメリカの心が強く美しく折れないほど、「敵」もまた折れないのではないか……と留保を付けてしまいたくなった。昨今のテロや戦争を描いたアメリカ映画を見ていて常に纏わりつく「永遠の負け戦」である事がここでも強く感じられた。この袋小路から抜け出す日はいつになるのだろう。