不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

私小説家と詩人

 高橋順子『夫・車谷長吉』(文藝春秋。一枚の絵葉書から交わった私小説家と詩人の人生。ベタつきのない涼やかな、だけど思慕のある文体で、私小説家の正気と狂気とその狭間を書いている。「この世のみちづれにして下され」という殺し文句。結婚の絵葉書を出した前後に、長吉は夜中に自転車で彷徨い、警官に止められた。怪しむ警官に「あなただって人を好きになって、夜中に自転車で走り廻りたくなることもあるでしょう」と懇々と説いたそうな。いい話だが、中学生ならともかく、この時長吉は四十五歳。それは止められるのは仕方ないのでは。発表を前提とした「癲狂院日乗」という日記があるそうだが、絶対各方面から怒られ、訴えられるだろうから出版社が断っていて、いまだ問題あるので出ないとか。読んでみたいなー。

夫・車谷長吉

夫・車谷長吉