不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

カフェ・ソサエティ/夢は夢だと夢が言う


 ウディ・アレン流の『ラ・ラ・ランド』とつい言ってしまいたくなる、ハリウッドを巡る夢と現の物語。だけど、きらめく星を掴めなかった美しき諦観よりも、バラ色の日々を追いかけていた輝ける時間を懐かしむような面持ちで、これでもかと出てくる名監督名俳優の名前も含めてジジイだけに許されるノスタルジーをシレッと描く老獪な映画作家はまだまだ健在である。と同時に、ユダヤ教談義も死生観についての侃侃諤諤も、彼なりの幕引きの準備なのかな、なんて事も思ったけれど。
 時の流れの慈悲と残酷を描きつつ、酸いも甘いも噛み分けた上で「人生は喜劇だよ、酷な脚本だけどね」とか「夢は夢だよ」とかあっさり言わせるあたりウディ・アレンの真骨頂。『アドベンチャーランドへようこそ』『エージェント・ウルトラ』に続く三回目のジェシー・アイゼンバーグクリステン・スチュワートのコンビも、それもこれも全部夢の一つとでも言いたいのかと思ってしまった。
 「浮気はしたことない?」と聞かれて「ないよ」と言ったのは嘘じゃない、だってこれは本気なのだから。でもその本気はやっぱり夢なんだよと、あったかもしれない未来を見ずに、いまここを見つめる哀愁が思いのほか沁みた。
 ヴィットリオ・ストラーロの撮影は眼福でした。