不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

引っ越し前後に読んだ本

 チャールズ・ウィルフォード『拾った女』(扶桑社ミステリー、浜野アキオ訳)。アル中男女のあれこれねぇ、とあまり乗り気にならずに読んで、中盤以降の捻りもふーん程度に思っていたら、最後のページをめくってのラスト数行で「えええッ!」と驚いた。小説の妙、何か所か読み直しちゃったよ。これがノワールなの? と疑問だったが、読み終えてみたら、0から0への疾走という意味では、たしかにノワールかもな。まぁ定義づけの問題ですが。欲望が皆無なので、そこをどう判断するか。ともあれ、数行でこんなにドキドキするとはねぇ、途中で放り出さないでよかった。

拾った女 (扶桑社文庫)

拾った女 (扶桑社文庫)

 乗松優『ボクシングと大東亜 東洋選手権と戦後アジア外交』(忘羊社)。競技や選手に焦点をあてるのではなく、戦後すぐのアジアという大きな視点から、「東洋選手権」を軸に国際(日比)交流史を眺める。あれほど対日感情が悪化したフィリピンで、政治ではなしえなかった交流をボクシングがしていたのだ。
 正直言って文章はかなり硬く、構成も生真面目なのでおもしろみは薄いのだが、丁寧かつ執念を感じられる取材で浮き彫りになってくる事実はどれも興味深く、おもしろい。中でも第三章の興行師、第四章の尊王主義者が白眉で読ませる。これだけで本一冊書けそう。清濁併せ持たねば何もできない世界であり社会なのだ。良くも悪くも。右翼だ左翼だ、保守だリベラルだ、と(勝手な定義で)レッテルを貼っていたところで、何もできないんだよ。様々な垣根を超えないと。なんて事も思いました
ボクシングと大東亜 東洋選手権と戦後アジア外交

ボクシングと大東亜 東洋選手権と戦後アジア外交