不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

「プロレスを考える」が繋がっていく

 鈴木みのる『プロレスで〈自由〉になる方法』(毎日新聞社。発売当初、気になっていた程度だったがtwitterのフォロワーの人が激賞されていたので読んでみたのだが、これね、めっちゃおもしろいですよ。ビックリした。自伝の類は好きではないのだが、堀江ガンツをインタビュアーに迎えた一問一答形式なので掛け合いがいいし、註も充実している。鈴木みのるといえば、ニックネームが「世界一性格の悪い男」でありながらとてもいい人として知られているが、まさにその人の良さや品が文章からにじみ出ているのが何だかおかしい。
 元は『KAMINOGE』の連載をまとめて加筆修正を加えたもの。『KAMINOGE』はインタビューやまとめ、構成がうまい。特別収録の高山善廣天龍源一郎との対談も内容の充実と共になかなかにスウィングしており、楽しませてくれた。カール・ゴッチ藤原喜明の存在の大きさ、あのライガー戦がどれだけ大事な試合だったのかよくわかった。ついでに言えば、佐々木健介の小ささ(と憎めなさ)も。そして、やっぱり小バカにされる中西学(でも、あのゴッチとのあれこれはバカにされても仕方ないと思う)。いま鈴木軍がノアで大暴れしているが、鈴木みのるなりの叱咤激励、あるいは恩返しなのだろうなと思う。本当にプロレスが好きなのだなと伝わってきた。
 先に書いた通り、いわゆる自伝語り下ろしになるわけだが、その内容はプロレス → U系 → 格闘技 → プロレスと渡り歩いた経験からのプロレス/格闘技論であると同時に、社員 → 経営者 → フリーという違った立場からの仕事/生き方論にもなっていて、かなり深い。こう言ってはなんだが、これこそが『教養としてのプロレス』なのではないか。主義や思想と言い換えてもいい。もちろん(本人もそう言うだろうが)これが正解ではないのだが、プロレスの真髄と、人生の本質がある気がした。