不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

あの日の事

 長谷川晶一『2009年6月13日からの三沢光晴』(主婦の友社。あの日の一日を克明に書き込んだドキュメント。新事実や、レスラーなど関係者の思いのこもった証言は読みごたえあり。死因がエゲツないものだったり、三沢に僧侶の「先生」や在日二世の「友人」がいた事なども興味深かった。特に前者は、宗教的な繋がりではなかったものの、一流になればなるほど人智を超えたものを求めるのかもしれないと思った。他にもそういった例はいくつかある。
 だが、正直言ってここで書かれているのは、あくまでドキュメントであってまだ見ぬ三沢像が浮かび上がるわけではなく、ノンフィクション作品としては踏み込みはかなり浅め。筆者は三沢が好きなんだなとわかるけど、好きであるがゆえに三沢の、そして関係者の奥底まで入っていけなかった感じがする。であるが故に、ああ、俺の知っている三沢だとも思えたわけだけど。また誰かが三沢光晴評伝を書くかもしれないので、未知の三沢はその時を期待しよう。
 といったことを冷静に考えられるようになれるくらいの時間なのだ、6年という年月は。あの日の事はよく覚えている。DVDで『砂の器』を見ている最中に「三沢がリングで倒れた」と知り、うろたえたものの何かできるわけがなく、ひたすら狭い部屋をうろうろした。そして、亡くなったとわかりガクッと力が抜けていった。有名人の死で涙を流すのはこれが最初で最後だろうと思う。翌日、俺は『レスラー』を見に行った。
 三沢への思いはここでもかなり書いてきたので、もういいだろう。いつまでも振り返ってばかりでは、逆に三沢に叱られる気もするし。それに、俺の心には緑色の光がいまだに強くある事は確かなのだから。

2009年6月13日からの三沢光晴

2009年6月13日からの三沢光晴