磯崎健一郎『電車道』(新潮社)。待望の磯崎憲一郎の新作は電鉄会社を築いた男の一代記にして、一つの日本百年史である。個人、生活、文明、国家、戦争などが網の目のように折り重なって歴史が綴られていく。端正な筆致や「私」という存在の欠片、時間の捉え方など秀逸で読ませる。やっぱり好きですね、この人は。混沌やダイナミックさが薄めなのがちと残念ではあるが。『電車道』という殺風景なタイトルも、非常に中身とマッチしていると思った。著者が好きなガルシア=マルケスや小島信夫に近い香りがした、と偉そうに言うほど知らないんだけど。著者はたしか、先を考えず、決めずに書くとインタビューで言っていたと記憶しているが、史実が背骨になっている本書もそんな感じで書いたのだろうか。
- 作者: 磯崎憲一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/02/27
- メディア: 単行本
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