不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ海外小説

 フェルディナント・フォン・シーラッハ『禁忌』(東京創元社、酒寄進一訳)。待望のシーラッハの長編で、相変わらずのキレキレかつ冷え冷えの文体と視線は健在でシビれるものがある。とはいえ、短編集を読んだ時の衝撃はさすがにない。事件の全体像は見えたし、おもしろいけど、ちとその実は掴みきれなかったかも。煙に巻かれたとは言わないけど、ちょっと拍子抜け。好きな文体だし、文量もギッシリ書かれているわけではないので、一気に読んでしまったが、少し勿体無かったかな。ちびちび楽しめるようにならんと。読むスピードの調整って難しいよね。

禁忌

禁忌

 レイモンド・チャンドラー『高い窓』(早川書房村上春樹訳)清水俊二訳を読んだのがだいぶ前なので、すっかり話を忘れていた。わりと地味でかっちりしている事件だけど、話の作り自体はは甘くて結構ご都合的。訳者あとがきでも書かれているが、ある場面をマーロウがかくれて全部見ていた、という展開はどうかと思う。「タフ」「雄々しさ」がキーワードになっているけど、あまり活かされてもいないような……。でも文章・文体はやはりよいですね。キザだけど、読ませる。
高い窓

高い窓

 ジョン・ウィリアムズストーナー』(作品社、東江一紀訳、布施由紀子編集協力)。地味で平凡な教師だった一人の男の、地味で平凡な生涯。どんな人間も人生には谷も山もドラマも歪みも、そして美しさもある事を端正な筆致で描く。ちょいと絶賛されすぎな気もするが、こういう小説はなかなか書けないんだよな。
ストーナー

ストーナー