吉村萬壱『臣女』(徳間書店)。不条理にしてリアリズム。身体が大きくなっていく妻とその夫。大きくなるのは現代社会における介護の意味もあれば、夫の罪悪感の表れでもある。こちらまで生活臭(もっと言うなら糞尿の匂い)が香ってきそうで、眉をひそめながら読み進めていくと、最後の数ページの解放に辿り着いてホッとする。それは壊れた心かもしれないけど。前作『ボラード病』に引き続き、不穏で不気味だが、こちらは少し滑稽さもあった。相変わらず内と外とに溝があり、その深さは底なしだった。吉村萬壱、すごいな。一人、独自の道をひたひたと歩んでいる感じがする。まだ最近の二冊しか読んでいないけど。

- 作者: 吉村萬壱
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2014/12/10
- メディア: 単行本
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- 作者: 円城塔
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/01/15
- メディア: 文庫
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