不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ日本の小説

 吉村萬壱『臣女』(徳間書店。不条理にしてリアリズム。身体が大きくなっていく妻とその夫。大きくなるのは現代社会における介護の意味もあれば、夫の罪悪感の表れでもある。こちらまで生活臭(もっと言うなら糞尿の匂い)が香ってきそうで、眉をひそめながら読み進めていくと、最後の数ページの解放に辿り着いてホッとする。それは壊れた心かもしれないけど。前作『ボラード病』に引き続き、不穏で不気味だが、こちらは少し滑稽さもあった。相変わらず内と外とに溝があり、その深さは底なしだった。吉村萬壱、すごいな。一人、独自の道をひたひたと歩んでいる感じがする。まだ最近の二冊しか読んでいないけど。

臣女

臣女

 円城塔『道化師の蝶』(講談社文庫)。初めてちゃんと読み通せた円城作品かも。表題作より併録の「松ノ枝の記」の方がおもしろかったが、それは「わけわかる」度がこちらの方が高いからか。文学の追いかけっこになかなか追いつけん。そういえば選評を読むの忘れていたが、よく芥川賞取ったなこれ……。
道化師の蝶 (講談社文庫)

道化師の蝶 (講談社文庫)