不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

読んだ本の中から

 トマス・H・クック『緋色の記憶』(文春文庫、鴻巣友季子訳)。凄惨な事件でも大いなる謎でもなく、一つの事件を丁寧に、一人の男の回想録として描いているのだが、うーん、センチメンタル。事件の全容をズバリ言わず周囲から語っていくのはいいけど、あまりにも肝を言わないよう言わないようにもったいつけているので、つい途中で「早く言えや!」とイライラしてしまった。だが、中盤以降、特に「証言」スタイルが出てきてからはグッとよくなった。上司の生涯ベストミステリの一冊として薦められて読んでみた(本も上司から借りた)。上司が好きなのがよくわかるが、俺はちと苦手な作風で、さて感想をなんて言おうか……。

緋色の記憶 (文春文庫)

緋色の記憶 (文春文庫)

 谷沢永一『紙つぶて―自作自注最終版』(文藝春秋。書評コラムというより書誌学コラムかな。これがおもしろいの何のって。溢れんばかりの読書量と知恵と視点、そして鋭い筆鋒。大御所だろうが何だろうが遠慮なし。さらに後から書かれた自注の豊富さにも驚く。実は図書館で借りて、二度延長したものの、全てを読み切れなかった。というか、期限内にバババッと読むものではなく、手元においてちびちび読んでいきたい。手に入れたいな。そういや、著者亡き後、膨大であろう蔵書はどこかで管理されているのだろうか、それとも散逸されたのか、気になる。
紙つぶて―自作自注最終版

紙つぶて―自作自注最終版