不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

神の線

 昨夜、紀伊國屋サザンシアターで行われた「年忘れ!山愚痴屋感謝祭」へ行った。要は山口晃『すゞしろ日記 弐』(羽鳥書店刊行記念トークイベントである。たまたまイベントがある事を午前中に知って、当日券も出るというので行ってみたら、すんなり入れた上にサイン会の整理番号もわりと早めをゲットできてしまった。その筋では大人気とはいえ、500人規模のハコでは空席が出るらしい。まぁ奈良美智村上隆が特例なんだろうな。
 Y女史の紹介で登場した山口画伯。風貌は知ってはいたが、声が小さくて笑ってしまった。さらに身振り手振りが日記のまんまなのも。変な人である。第一部は客席から三つお題をもらって、その場で障子絵を墨で描く。一つ目は「ほとばしるパッション」「5000万円もらったら何をするか」「美人カミさん」。
 少し考えてから描き始めたのだが、グイググイと何かしらを描いて、はてここは何のどこの部分なのだろうと思っていたら、不意に顔がウワッと浮かび上がって来たものだから驚いた。その後も、何気ない線一本がいくつか描かれる事でグワッと絵が出てくる。絵の魅力や実力は知っていたつもりだったけど、目の前で描かれると、想像以上の線と絵で感動すらしてしまった。せっかくなのでもう一つと、今度は「くまモン」「馬」「お・も・て・な・し」でした。
 短い休憩を挟んで第二部は、画伯の一年を振り返る。一月からあれはこうで、これはああでしたと小さい声で思い出しながら話すのだが、飄々とそこかしこに毒を入れてくるのがおもしろい。あと、テレビは見ていないそうだが、ネットは結構やっているようで、エゴサーチをしているのは意外。……こんな末端にある日記に辿りつく事もあるのだろうか。
 9時頃に終了して、最後にサイン会。サインにはほとんど興味がないのだが、画伯にあの線で俺の名前を描いてもらえるのなら、もはやそれは一つの作品だろうと思って、喜び勇んで並んでしまった。これまた一線一線しっかりと描かれていて、描き終えると息を吐いていた。有り難うございます。家宝にします。

すゞしろ日記 弐

すゞしろ日記 弐