ポール・ホフマン『放浪の天才数学者エルデシュ』(草思社文庫、平石律子訳)。俺は文系だが数学は結構好きで、先日の「数学はやり直してみたい」という一文もこの本を読んだのが理由の一つ。
定住せずにスーツケーツ一つ持って世界を放浪し、一日19時間数学を考え続ける天才数学者のノンフィクション。メチャおもしろい。ハンガリーという激動の国に生まれ、その歴史に翻弄されながらも、数学への純粋な思いだけを持って態度を貫き通している姿は勇敢で、それでいて愛らしいジイさんだからたまらない。
エルデシュ本人だけでなく、他の数学者もたくさん登場して、みないろんな意味で変人ばかりだからおもしろい。天才といえば我が強く、周りに迷惑をかける事が多い存在で、エルデシュにもその気があるものの、基本的にとてもいい人だ。早いもの勝ちの学者の発表の世界で、共同に研究したり、率先して協力者の名前を一緒に掲載したり、金に興味がなくて他人が研究をすっぱ抜いても怒らなかったりと、勝ち負けではなく知識を追求するという、「数学」に対してだけ純粋である事がすばらしい。しかも子供好き。本人の性癖などにも言及しているのはいいポイントだと思う。当然ながら数学自体にも話は及ぶが、わりとわかりやすく書かれていて誰でも楽しめるはず。草思社は地味だけど、いい本出すよな。
- 作者: ポール・ホフマン,平石律子
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2011/10/04
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