不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

エレカシ作品感想「まだまだ聞き足りない」

 先月末、エレファントカシマシのデビュー25周年企画の一つである「完全限定生産 [the fighting men's chronicle] 〜 THE ELEPHANT KASHIMASHI official live bootleg box」が手元に届いた。6枚を2回ほど聞いたので、一枚ずつ簡単な感想を。感想はディスク番号ではなく俺の聞いた順番で、その順番には特に意味はない。

『complete unknown〜days of shimokitazawa』

 一発目は1995年の下北沢SHELTERの発掘音源。何でも《ある人の隠し録り音源》だそうである。その割には音は悪くない。95年といえば、言わずと知れたエピックとの契約を切られた後であって、手探りの時代である。次の契約は、おそらくまだ決まっていないタイミングであろう。フラストレーションと、失意の中で生まれてくる新曲の力強さが、演奏に独特の緊張感や強度を作り出している。未発表曲“ライブにせかされて”は、契約を切られた恨み節を炸裂させていて笑える。終盤に“俺の道”三連発があり、じょじょに完成していく模様が興味深い。ラストの“ファイティングマン”はこの10年後、2005年の下北沢CLUB Queのパフォーマンス。10年の時間の違いはあれど、あまり演奏や声に違和感がないのはすごいと思う。

history of japan「日本の歴史」』

 副題に「エレファントカシマシ ロックインジャパン ライブヒストリーⅡ」とあるように先に出た『日本 夏』の続篇だが、年末のカウントダウンジャパンやジャパンジャムからもセレクトされている。最近の楽曲(演奏)が中心で、その粒ぞろいっぷりから充実度がよくわかる。“生命賛歌”が二つ収められているが、どっちも凄まじい迫力。毎回こんな歌いっぷりをしているんだから魂削ってるわな。どこかが不調になるのもうなづける。そんな咆哮と、アコギを持った時の落差がまた凄い。改めて、至高の声だと再確認。

『on the coner「野音 春」』

 2007年の野音から新旧取り混ぜの楽曲群だが、タイトル通り春っぽい歌ばかり。さらに07年といえばユニバーサルミュージックへ移籍したばかりで、“俺たちの明日”からの快進撃が始まる直前である。そういった新しい環境からのリスタートだから、パフォーマンスは充実していて、聞いていて本当に気持ちがよくなる、とてもいいライブ盤となっている。加えてホームといってよい野音なだけに、メンバーののびのびした演奏がナイスです。特に“偶成”“なぜだか、俺は禱ってゐた。”“絶交の歌”がいい。“俺たちの明日”が二回あるが、一回目はアコギ弾き語り、かつ幻の三番があったりして必聴。

『who's next〜select from 渋谷クアトロマンスリー '95 to '96』

 タイトル通り渋谷クアトロでのパフォーマンスが収録されている。ポニーキャニオンとの再契約後、つまり最初のブレイク直前の時期で、まさに勢いのままに波に乗っているのがよくわかる。“GT”がレアで、どんな曲か忘れていたよ。“男餓鬼道空っ風”のめちゃくちゃなコール&レスポンスが笑える。いま思えば、こんなフランクなコール&レスポンスをする事は、それまでのエレカシにしてみれば革命的な出来事だったのだろうな。

『early autumn「野音 初秋」』

 公式HP曰く《8年前に限定発売された「野音 秋」を含む野音3部作の上巻として、初期の野音音源を発掘》したもので、《当時のPAエンジニアの自宅を捜索して発掘された》そうな。そんな事があるのかよ。ともあれ、おかげで聞けるのだから文句を言う筋合いはあるまい。野音ならではの初期の楽曲群で、たぶんパフォーマンスも初期のものが多いと思ったらその通りだった。そのためか、演奏はうまくはなく、とても重たい。そして、荒くて、青くて、怖さがあって、生々しい。中でも“待つ男”のドッシリした声と音はすごい。時折り虫の音が聞こえてくるのもナイス。

『I'll be there〜武道館&新春ライブセレクション』

 武道館公演や新春の渋谷公会堂公演が収録されており、どれも充実のパフォーマンスで中でも“あなたのやさしさをオレは何に例えよう”の多幸感は本当にすばらしい。そんなふうにリラックスして聞いているところに流れてくる91年の伝説の3000人武道館の“待つ男”、その鬼気迫る声にビビる。3000人武道館の模様はYoutubeで見た事があるが、これを生で正面から見られるかなと思ったものだ。


 以上です。録音レベルに差はあるが、どれもなかなかに聞きごたえ十分ですばらしい。収録曲に少しばかり偏りがあった気がするが、音源あるかどうかもあるし、オリジナルアルバムを21枚も出しているのだから、多少の偏向があっても仕方ないのかもしれない。だから、また別の曲を入れたボックスを出してもいいんですよ。というか、出してくれ。ひとつ、よろしくです。